ビートルズのLet It Beは本当のラストアルバム

The Beatles

アルバム「Let It Be」は1970年5月8日イギリスにて13作目のアルバムとして発売。同名映画のサウンドトラックである。

本作は「ゲット・バック・セッション」のレコーディングを基に制作が行われていた。この「ゲット・バック・セッション」はアルバム「アビーロード」の制作前に始められたため、長年「アビーロード」がラストアルバムであると認識されていた。

しかし「アビーロード」制作後にも「ゲット・バック・セッション」が続けられていたことが1990年代になって判明したため、本作がビートルズのラストアルバムであることが明らかになった。

ゲット・バック・セッション

「ゲット・バック・セッション」は原点に帰る(Get Back)という意識のもとで行われたセッション。ビートルズ初期のレコーディングさながら一発録音での制作を目指したアルバム「Get Back」のために行われた。

「ゲット・バック・セッション」の模様を撮影して映画にするために、当初はトゥイッケナム映画撮影所でセッションが行われた。しかしメンバー間の対立などがあり、アップル・コア本社へ場所を移さざるを得なかった。

それ以降はマルチトラック・レコーダーによるレコーディング・セッションが進められたが、結局アルバム「Get Back」は発表されなかった。

 

収録曲

Two Of Us

1969年にポール・マッカートニーによって作詞・作曲された。

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ビブラートのかかったアコースティックギターのリフから始まる(正確にはジョンのナレーションから始まる)この曲は、リラックス感・緊張感・円熟度が適度に混ざってオープニング曲としてはいい仕事しています。

左右のアコースティックギターがどちらもやや音割れしていたり、ジョンとポールのヴォーカルに余裕が感じられたりして、LIVE感満載の1曲になっています。

Dig A Pony

1969年1月30日アップル本社の屋上で行われたルーフトップ・コンサートでの演奏を収録。作詞・作曲はジョン・レノン。

ビリー・プレストンがエレクトリック・ピアノを演奏している。

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ユニゾンのツインギターから始まる2曲目はブルース色が濃く出ていて、ダイナミックな演奏となっています。

聴きどころの1つはジョージ・ハリスンのギタープレイ。曲全編に渡っていぶし銀のプレイを奏でています。間奏のリードギターもこれまた渋い。

Across The Universe

ジョン・レノンの手によるこの曲は1968年2月にレコーディングされた。

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ジョンによるアコースティックギターのスライドが印象的なイントロから始まる3曲目。曲名の通り宇宙的・神秘的な香りがします。

また、ジョンによるワウが掛かった(またはロータリースピーカーを通した)エレキギターがいい味を出しています。ただフィル・スペクターによるコーラスのアレンジが強すぎると個人的には思っています。

ジョンはこの曲がたいそうお気に入りのようで、後に「最高傑作かもしれない。良い詩だ。僕が好きなのはメロディーが無くても成立する歌詞。」と語っています。

I Me Mine

ジョージ・ハリスン作詞・作曲のこの曲は1970年1月にレコーディングが終了。ビートルズとして録音された最後の楽曲である。(ただしジョンは参加していない。)

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この曲もブルース色が強く、イントロから引き込まれていきます。と思いきや途中から突然シャッフルのリズムに代わり、ややユーモラスな曲調になります。

フィル・スペクターによってオーケストラがオーバー・ダビングされていますが、これはフィットしていると言えるでしょう。

Dig It

1969年1月アップルスタジオで録音された。作詞・作曲はメンバー4人の名前がクレジットされている。

15分以上に及ぶ長いセッションの中から51秒間だけを採用した。

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遊び心のまま演奏したものを収録したという感じの曲。

BbーFーBb-Cの3コードを繰り返しているだけなのですが、セッションではこういうものが盛り上がる場合が多く、ユーモアあるジョンのヴォーカルとナレーションが楽しめます。

ビリー・プレストンのハモンドオルガンも印象的。

Let It Be

ポール・マッカートニー作詞・作曲。1969年1月と4月、1970年1月にレコーディングされた。

解散前の正式ヴァージョンとしてはシングル版とアルバム版の2パターンがある。違いは、ジョージのギターとラストのサビの繰り返し回数、オーケストレーションとコーラス。

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当時はピアノ練習曲などと言われたポールのイントロはあまりに有名。ただよく分析してみると、単純ながらもセンス溢れる演奏だという事がわかります。

左手は小指と親指でオクターブを弾いていて低音をしっかり支えています。一方右手は基本4分音符ですが2小節目と4小節目に少し動いてアクセントを作っています。また、良く聴くとCからGへいく直前に左手が(グリッサンド風に)微妙に細かく動いているのがわかります。

初めはピアノとヴォーカルの弾き語りですが、まずオルガンとコーラスが加わり、次にドラムのハイハット、その次にベース、そしてサビになってドラムがフルになりブラスなどが加わってきます。

日本ではこの曲の人気は特に高く、シングル盤は138万枚以上のセールスを記録しています。

個人的には、ギターソロも含めてジョージのギターがアルバムヴァージョンの方が好みではあります。

Maggie Mae

イギリスのリバプールの民謡。ジョンとポールはビートルズの前身バンドであるクオリーメン時代からこの曲を歌っている。

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この曲もセッションでの遊び心から演奏したものをアルバムに収録したという感じです。

ジョンとポールはヴォーカルとアコースティックギター、ジョージはエレキギターでベースラインを弾いています。

40秒ほどで中断してそのまま終わっていますが、アルバム「Let It Be」がサントラ盤であるという体裁を一応保つために入れておいた、というところでしょうか。

I’ve Got A Feeling

1969年1月30日のルーフトップ・コンサートで演奏されたもの。文字通りレノン=マッカートニー共作の楽曲。

アナログ盤ではB面1曲目となる。

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イントロはエレキギターのAとDのアルペジオから始まり、すぐにポールのヴォーカルが入ってきます。

後半ジョンのパートに代わりますが、これは2人が別々に作った2曲をくっつけたためこうなったようです。この制作手法はビートルズでは度々行われています。

ビリー・プレストンのエレクトリック・ピアノもいいですが、こういう演奏を聴いていると、1966年までのツアーでの演奏とはまるで違った余裕や円熟味が感じられます。

One After 909

この曲は1960年には完成しており、ジョンは自作であると主張し、ポールは共作であると述べている。

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2つのギターのチョーキングから始まる軽快なナンバー。かつて「From Me To You」のセッションで録音されたことがあるこの曲は、初期のテイストを残しつつ1969年ヴァージョンとして作り直してあります。

The Long And Winding Road

ポール・マッカートニー作詞・作曲。日本とアメリカではラスト・シングルとして発表されている。

アルバム「Get Back」のために録音されており、当初はオーバーダビングを使っていなかった。しかし後にフィル・スペクターによってオーケストラとコーラスが加えられて編集されている。

ポールがこの変更を大いに嫌い、抵抗したが結局はフィル・スペクターヴァージョンが採用された。

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曲自体は間違いなく名曲であり、後に多くのミュージシャンによってカバーされています。もっとも、他の多くのビートルズナンバーもカバーされまくっていますが。

このフィル・スペクターによる再プロデュースは正解かと思います。初期ヴァージョンも味がありますが、オケやコーラスが加わって壮大なスケール感のある楽曲に仕上がっています。

なお初期ヴァージョンは1996年に発売された「ザ・ビートルズ・アンソロジー3」に収録されています。

For You Blue

ジョージ・ハリスン作詞・作曲。当時の妻パティ・ボイドへのラブソングとして1968年後半に作られた。

1969年1月に「ゲット・バック・セッション」の一環として録音された。

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これもブルージーな味わいのある曲で、ジョンによるラップ・スティール・ギターが雰囲気を醸し出しています。またポールのスタッカートが印象的なピアノも大きなアクセントになっています。

後に録音し直したというジョージのヴォーカルも渋い。

Get Back

ポール・マッカートニー作詞・作曲。1969年4月に19枚目のシングルとして発売され英米でチャート1位を獲得している。

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ノリのいいビートとメロディ、そしてAからGーDへのキメがカッコいい!

ユルいジョンのリードギターもいい味出してるし、ビリー・プレストンのエレピも素晴らしい。

この曲は聴いてもいいし、カバーして演奏しても気持ちのいい曲なのです。

アルバム「Let It Be」の評価

このアルバムはイギリス・アメリカでチャート1位を獲得しており、商業的には成功している。

しかしフィル・スペクターのプロデュースによるこのアルバムを、長年ビートルズのプロデューサーを務めてきたジョージ・マーティンは失敗作だったと述べている。

またポール・マッカートニーもこのスペクタープロデュース作品を評価していない。

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個人的にはこのアルバムを初めて聴いた時から、何か散漫な印象があるのを否定できませんでした。

個々の曲を見ればいい曲も多くあります。でもまとまりに欠けるところもあるように感じられました。

サウンドトラックだからそんなものだ、と言う意見もあるでしょう。

結局は聴く人がどう感じるかです。

良いアルバムかどうかは個々それぞれが判断すればいいことなのです。

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蛇足ながらこのアルバム、アナログ盤(LP盤)では見開きのジャケットになっていて、開くとスタジオなどの様子が大きな写真で見られるのも魅力の一つです。

 

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